グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

いい学校とは

職業柄といいましょうか、知り合いの方やあるいは友人つながりの方まで、「相談に乗って欲しい」と言われることがあります。
元来、人の助けになることは自分の徳を積むことだと思っているので、ありがたく相談にのらせていただくのですが、最近多い質問で、答えに窮するものがあります。
 
「A校とB校、どっちがいい学校でしょうか」
「今度Cに引っ越すのだけれど、その地域でいい学校を教えて欲しい」
「D校はいい学校だって評判だけど、どうでしょうか」
 
など。
正直に言いますと、完璧に「いい」学校なんて、世の中には存在しません。個人のニーズも違い、能力も違い、習う先生によっても違い、ひょっとすると通っている間に子どもの方向性も周囲の環境も変わるかもしれない。
そういう個性×不確定要素で計算をすると、確率として何万通りもの評価が生まれると思うからです。
 
私ができるのは、「親子で実際に学校に足を運んで、ご自分とお子さんの目で見てみるのが一番ではないでしょうか」という、実にどうでもいい返答だけです。皆さんちょっとがっかりされます(笑)。
 
そして、その場ではあまり口にしないようにしていますが、親が思う「いい」は、果たしてその子の実態に沿っているのか?という疑問もあります。だから必ず、「お子さんと一緒に足を運ぶ」ことを勧めるのですが。

まず、親が思う学校の「いい」部分というのは、いかんせん時代遅れであると思った方がよいのでは、と思うのです。なぜなら、普通、親は今現在の学校というものに通っていません。だから「いい」かどうかを判断する材料として、どうしても自分の学校観というものが影響する。それは軽く30年前の情報です。

また、進学率や進学先での判断は、蓄積されたデータであったり、あるいは「昨年度の実績」と言っても、高校であれば子ども自身が受験時期になる頃にはそれは4年も前の話、小学校の「中学合格実績」なんてものはもうひと昔前のことになります。

普遍の価値観や過去の実績を無視すべき、とは言いません。ただ、誰が通う学校なのか?ということを必ず念頭に置いて欲しいと思うのです。
 
最近は情報過多なので、気になる学校名をちょこっと打ち込めば、あらゆる評判や口コミが検索できます。もちろん中には釣りもたくさんあるのですが、それらにやたら振り回されてしまっている人をたくさん見かけます。どこそこの学校はいい学校だが、その学校に行くにはあれとこれをしなければならない、など、実態を知ってる身からすればよくもまあこんなでたらめを書けたもんだと呆れるようなものをも、あっさり信じてしまっているケースが多いです。
 
なんとなくですが、親が子どもの学校に求めるものが増えているなあとも感じます。だから、より多くの条件を満たしてくれる学校に「いい」と感じるのでしょうか。

必ずしも学校がその子どもが最大に能力を発揮する場とは限らないということを頭に置くといいのかなと思います。学校の外に打ち込める場や活躍の場があっていいと思うのです。
何か1つ揺るぎのないものを持った人は、どんないい学校を出ようが出まいが関係なく自力で前に進むことができる。これからの世界で活躍する人材とは、そういう絶対的な力を持った人であるでしょうし、すでにそういう人々が世界を変えるほどの影響を及ぼし始めているのは明白です。