グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

世界で最も長く働く日本の先生

本の学校の先生は世界で最も長く働くそうです。1週間に平均53.9時間、1日10時間以上の勤務時間という計算です。平均で、ですよ。
それなのに、授業の準備時間は他の国と大差がありません。つまり、授業準備とは関係無いことに多くの時間を費やしているのです。
 
例えば部活動。課外活動があるのは他の国でも同じです。しかしながら、あくまで余暇を楽しく過ごすためのもの。週1回1時間は担当する義務があったりしますが、主に教員が自分の好きなことを課外活動にします。だから生徒の参加は個人の選択によるし、何部に所属していたか、なんて成績表に書かれることもなく、そんなに重要視されることもありません。本当にがっつりやりたければ、個人でチームに所属してくださいな、と。日本の中学の部活のように、毎日のように放課後に練習があっておまけに週末は試合で費やされる、なんてことになったら、「子どものリラックスタイムを奪うのか」「家族と過ごす時間をどうしてくれる」と、それこそ大問題になります。
 
また、やれ給食費を集めるだの、地域のお祭り企画に参加するだの、そういう直接授業に関係無いことは、教員は一切やりません。なぜなら責任が取りきれないからです。お金の管理は事務の会計がまとめてやるもの、地域活動は広報が担当するもの、資格も専門のスキルもない教員がそういうものを担当するのは責任追求をされたときにおおごとになってしまいます。「それは我々の仕事ではありません」というセリフを言って、なんだか無責任な人だと思われるのは日本だけ。本来は責任の所在を明確にしている、むしろ責任ある発言なのです。
 
まあそういったわけで、授業時間にそれほど時間を割いているわけでもないのにやたら忙しそう、それが日本の先生の現状です。
 
 
私がこの記事を読み、最も「問題だなあ」と感じたのは、校外での研修に参加する先生がとても少ない、ということです。
私自身、日本で教員をしていた時には、恥ずかしながら校外での研修に参加などしていませんでした。学校を出るのはいつも夜8時ごろで単純に参加できる時間ではなかったし、そもそも校外で研修や勉強会を定期的に行っている団体の情報も1つ2つしかありませんでした。
でも海外で教えるようになって、実に研修や勉強会の多いことに驚きました。そしてみんなどしどし参加するのです。オンラインでも盛んです。学校から費用が出る場合もありますが、そうでなくても、みんなあれこれ情報を集めてせっせと学びます。日本より1日3時間時間学校で働く時間が短いけれど、その分、研修に参加したり、新しいメソッドの本を読み研究したり、勉強会に出たりしています。
 
なぜそんなに研修や勉強をするのか。
それはもちろん、子ども達によりよい教育を施すため、ではあるのですが、直接には自身のキャリアに響いてくるからです。日本のように一度採用試験さえ通ればあとはそのまま給料が増え続ける、というシステムではありません。公立の先生でも自分で学校を変わったり、校内で新たなポジションにチャレンジしていかなければ、給料は上がっていきません。そのチャレンジのためには、どういう研修をしてどういうスキルを身につけてどうその学校に貢献できるのか、アピールをしていかなければならないのです。だからみんな必死で自分のキャリアに箔をつけていきます。
また、校外で研修を受けると、いいネットワーク作りになることも確かです。他の学校の情報を得たり、また他の勉強会の情報を得たり。コネクションが大切なのはどこの世界でも同じですよね。そして、同業他社(笑)の仲間と話をすることで、悩みを分かち合うことができることも確かです。特に若い教員たちが行き詰まってしまうことも少なくなるのではないかと思います。
 
 
さて、それではどうしたらいいのか。
改善する余地はたくさんありすぎて非常に難しいのですが。。。一番初めにできることは、意識改革なんじゃないかと思うのです。教員たちが「まずい、もちょっと勉強しないと」とそれぞれ思い始めたら、そのための時間捻出をしようとして、もっと仕事を効率化しようという動きが出てくるはず。動きが大きくなれば世の中は変わっていくのです。でも小さな動きさえもない状態では、「忙しすぎる」と文句を言って誰かがどうにかしてくれるのを待っているだけでは、どうやったって何も変わらない。
世界で最も勉強しない教員たちから、トップレベルの生徒が生まれてくるはずはない。その危機感をもっと現場の人間が感じるべきだと思うのですが。