グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

算数は数字だけではない

国際バカロレアにおいて、初めに日本人やアジア人が戸惑うのは、算数の学習の仕方といってもいいでしょう。

 
例えば計算の仕方。なるべくたくさんの違った解答が求められます。
2年生レベルだと、12+27+41 の答えを出す時には
1)10+20+40=70 2+7+1=10 70+10=80
2)10+30+40=80 80+2ー3+1=70
3)10+29+41=10+30+40=80
などと、どんどん考えた上、口頭で説明をします。この数字はどこでどう変換したのか、なぜそうしたのか。どの方法が効率的か、それはなぜか。時にディスカッションを交えて、ではその方法は他の例にも応用できるのか、などと進めていきます。
 

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聞いているだけでまどろっこしく、「その分計算問題をたくさんやったほうがいいのでは」と思うかもしれません。確かに低学年のうちはそういう部分もあると思います。九九は覚えてしまった方が絶対に速い。それはそうです。
しかし、学校の授業というのは訓練ではない、というのが国際バカロレアです。九九を覚えたければ覚えればいい。算数ドリルをやって計算のスピードを上げたければ、やればいい。でもそれはあくまで、個人の自主学習の範囲なのです。学校では思考の範囲を広げ、周囲と知識の刺激をしあい、他の学習と関連付けて学ぶことが求められます。
 
「なんだか簡単な計算問題をやっているような気がしますが」という問い合わせを保護者から受けることがあります。その時に私がよく使う言葉は、「算数は数字だけではありません」です。
IT化が進んで、計算機で計算をすることが当たり前になってきています。難しそうな掛け算や割り算も、打ち込むことさえできれば答えは瞬時に出ます。
でもなぜ算数を学ぶのか。
それは、論理的思考力を養うためなのです。数学的思考力は、論理的思考力を支える要素の1つです。
 
数学(算数)で解析、確率などを学ぶことは、のちの問題解決能力を支えるということは比較的わかりやすいですが、小学生レベルとなるとイメージしにくいかもしれません。
しかし、例えば前出の計算問題などはアルゴリズム(算法)の訓練で、「できるだけ短い手順で、正確な解に到達する」という思考法につながります。様々な解法を考えるのは、問題をどういうステップや要素に分けるのかという実践になるでしょう。明晰な問題解決の筋道を立てる練習は、論理的な思考力の根幹となることは言うまでもありません。
 
ピタゴラスニュートンも哲学者。そう考えると、小学校の算数は哲学の入り口でもあるのです。