グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

世界史を早めに学ぶ

日本の小学校は、6年生で歴史の勉強に入ります。社会科の学習は、1・2年生の生活科で学校のことや家族のことなど身の回りの社会のことについて学習し、3年生で地域の町のことを学び、4年生で都道府県に視野を広げ、5年生で日本の地理や産業を学んだ上での、6年生の日本の歴史。よく考えられた積み上げ式の社会科の学習です。
 
これに対して、国際バカロレアでは、始めから世界を見ます。先日の2年生のテーマは “Understanding past civilizations can help people better understand the world today(昔の文明を知ることは現代の世界を理解することにつながる)”というもので、古代エジプトのことなどを個々が調べていました。ピラミッドは誰がどうやって作ったの?ミイラってなに?など、それぞれのもった疑問をベースに授業が展開されていきます。
3年生では、”Migration is a response to challenges and opportunities, impacting people and places(移住は可能性を求める上での1つの答えであり、人々や地域にも影響をもたらす)”をテーマにし、何故人は違う国に移り住むのか、移民が与える地域への影響は、などを世界の歴史になぞらえて考えます。アイルランドからアメリカ、中国からシンガポール、などの例を見ながら、当時の状況と現在とを比較していきます。
 
世界史を学ぶというと、どうにも難しく考えがちですが、世界地図を見て、寒い地域や暑い地域があることを知った時、それではなぜそこに人々が住むのか、何を食べ、どんな言葉を話すのか、そういう当たり前の好奇心はどんな子どもにでも湧いてくるはずです。それを、「いやまずはしっかり日本のことを学んでからでないといかん」と抑える理由はありません。ましてや、グローバルな人材の育成を目指し、小学校から英語教育を本格化しようという動きがあるのに、そういう国際的感覚を育てない手はありません。
 
だから、世界史を早くから学び始めるといいと思うのです。縄文時代を長々とやる代わりに「では世界の他の国での土器はいつどのように生まれたか?」と比較したり、戦国時代の統治の流れを学んだらローマ帝国の統治の仕方との共通点を見てみる、そういうほんのちょっとの視野の広げかたが、子ども達の今後の国際感覚につながるのです。
 
日本は鎖国終了後150年あまりしか経っていません。それから2度の世界大戦を経て、その後は急速に世界の国々との関わりが増えました。そして、近年ではもう世界の諸問題が対岸の火事とは言っていられない状況になっています。問題をきちんと理解をせず、浅薄な情報にだけ惑わされていては、いつまでたっても鎖国状態と変わりません。世界で問題が起こった時、まずその歴史的背景の考察から原因を探り、問題の本質を理解し、建設的な答えを探していく、そういう姿勢を身につけさせるのがグローバル教育なのではないかと思います。