グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

それでも、やっぱり、暴力はいけない

「彼の言ったことは確かにあなたを傷つけたかもしれない。
あなたが頭にくるのもよくわかる。
でもね。
そこであなたが彼を叩いたり、押したり、蹴ったりしても、何の解決にもならない。
それどころか、すべての悪があなたのところに集まることになるんだよ。
暴力を振るった時点で、あなたはもう何の言い訳もできなくなる。悪いのはあなただということになる。」
 
と、私はいつも子どもに言います。幼稚園生の子どもにも、同じように話します。
子どもだから暴力が許されるという考え方は、世界のどこでも通用しません。子どものうちにこそ、暴力を厳しく諭さなければいけないのです。
 
 
日本人のYくんはたたかいごっこが好きで、日本の幼稚園でもよくお友達と「とりゃー!」と叩き合ったり蹴りあったりしていたそうです。もちろん、いわゆる寸止めの範囲ではあったらしいのですが。
それを他の国の友達とも元気にやっていたある日。イギリス人の先生に、親御さんは言われました。
「彼のバイオレンスをやめさせてほしい」
バイオレンスなんて、大げさよねえ!と親御さんは笑っていたのですが・・・
確かに、日本の幼稚園で日々繰り広げられているような「たたかいごっこ」は、私の経験では、見ることがないのです。鬼ごっこはあっても、あくまでルールにしたがって追いかけ合うだけ。スパイダーマンになりきって、あちこちに蜘蛛の糸を投げている(つもりの)子はいるけれど、あくまでそれだけ(だいたいこういうタイプの子は見えない敵と戦っていることが多いです)。
おそらくそんな中に、いきなり「おらー!」っと拳が飛んできたり、刀を振り回されたら、軽いパニックが起こると想像できます。あの子は急に大きな声を出す、怖い顔で殴ろうとする、物を振り回して追いかけてくる、と苦情の嵐間違いなしでしょう。
それほど、暴力に敏感なのです。
殴る、蹴る、などの実際の暴力だけではありません。小学生になって、今流行りのマインクラフトでうっかり友達をやっつけたりしちゃったら、それこそみんなから「ゲームがわかっていない」「ぜんっぜん面白くない、おまえ!」と総スカンをくらいます。
 
 
日本人はサムライ魂があるから・・・なんていう冗談は全く笑えません。空手や剣道、柔道は日本の文化ですが、あくまでも決まった時間、定められた空間で、ルールに則って公平に戦うスポーツです。それに、本当のサムライは簡単に刀を抜いたりしない。必要以上にびくびくすることはないですが、「わんぱく」で済むと思っている範囲は、実は人によって大きく違うのだということを、よく肝に銘じておかなければなりません。特に、国際化だグローバルだと言われる昨今では。
 
主張を暴力に変えてしまう悲しい出来事が世界中で起こっている今日このごろ。そこには様々な事情や、歴史や、思惑や、あらゆるものが絡み合って複雑極まりない状況があるにせよ、自分の揚げた拳のやりどころを誤ることが、いかに世の中の人々を悲しませてしまうかということを、子ども達にもしっかりと考えさせていきたいです。