協働とデザイン
真似なのか、既存のアイディアの利用なのか
お隣同士の子どもたちが書いた絵がそっくりになることがあります。時に「真似をしている、された」などと揉め事になったりします。親御さんからも、「うちの子はいつも誰それの真似ばかりして、個性がなくて」なんて言われることもよくあります。同業の仲間からも「みんな似たような作風でつまらない」という話も聞きます。
とかくアートに関しては、人と違うことがよしとされる風潮ですが、前回お話ししたように、創造性はユニークさだけが求められるのではありません。お隣の子どもとそっくりな絵を描いている時、それは言い換えれば、外部からの刺激を取り入れた思考の変化を表現している、と言えるのです。みんな同じようなデザインになった時には、その1つの発想の刺激が大変に強かったか、他にさしたる刺激を与えることができなかったか、どちらかです。
ですから、もし、お子さんがお隣の子とそっくりなデザインの作品を仕上げた場合は、「この子は既存のアイディアをデザインできる力がある」という目で捉えてあげてください!
協働の学び
発達心理学者ヴィゴツキーは、子どもの発達には自分で解決できることと、まったく解決できないことがあることを示しました。そしてそれらの間は「誰かに助けてもらったり、模倣をしながら取り組めること」であると考えました。この「間」の部分に適切に働きかけることで、より子どもの可能性を広げることができるのです。
子どもの発達は一人一人異なります。ですから、集団で活動することで、互いに異なる刺激を与え合うことができるのです。それが、協働の学びです。1つのプロジェクトに一緒に取り組むということは、異なる思考を集めて共に広げていくことです。デザインワークや制作であれば、互いの思考が可視化されたものが見えるので、より思考を広げやすくなります。こうした経験を積んでいって、より豊かな思考が培われていくのです。
コミュニケーション
当然のことながら、集団で何かをするときには、コミュニケーションが必要です。communicate、community(コミュニティ)などに使われている始めのcommuniという部分は、「共通の」という意味からきています。さらにここには価値観の共有や感覚的な平等性のようなものも含まれます。つまり、その集団の中の誰もが、相手の意見を取り入れながら自分の思考を再デザインするという行為を行うことがコミュニケーションなのです。
協働でのデザインワークはこのコミュニケーションを可視化したものです。子ども達なりにコミュニケーションを可視化しつつ積み上げていくことで、社会性が育まれていきます。