グローバル教師と地球の子ども達

30カ国以上の子ども達を、アジアとヨーロッパのインターナショナルスクールで教えた教師が考える。これからの時代の教育とは?教師とは?子育てとは?

Hugは世界を救う

幼稚園クラスの子のお話。

 

日本人のSちゃんは、日本を離れて来たばかり。英語がまったくわからない。だから、朝ママと離れるとき、不安でいつもポロポロと泣いてしまっていた。朝の会で「おはよう」と言い合うとき、自分の番になると、緊張から涙が溢れて声が出なかった。英語で話しかけられると、震えてしまうこともあった。

 

先週、お絵かきの時間の出来事。「ここにピンクを塗りましょう」と言われ、スウェーデン人のMちゃんが、色鉛筆の束からピンク色を探していた。なかなか見つからず、困っていると、横からSちゃんが、「ピンク」と小さな声で言いながら、自分の使っていた色鉛筆を彼女に差し出した。

Mちゃんは、「アッ」と言ってニッコリとそれを受け取った後、おもむろに立ち上がった。どうするつもりなのかと、一瞬ヒヤリとしたら、MちゃんはSちゃんを、ぎゅーっと抱きしめたのだった。Sちゃんの親切な気持ちに、感謝の気持ちをこめたハグ。

Sちゃんにもその気持ちが十分伝わった。2人はそれから、ずっとニコニコ笑いあっていた。

 

そうか。言葉じゃなくても気持ちを伝えられることがあるんだ。きっとSちゃんはそのことがわかったのだろう。彼女はハグが大好きになった。そして、毎朝、友達にも教員にも飛びついてハグをしてくるようになった。遊んでいるときも、とにかく目があったらまずハグ。

こうして彼女は泣かなくなった。英語で話しかけられても、笑顔で聞くようになった。

 

言語を越えたコミュニケーション能力。世界の誰とでもわかりあえる術。これこそ学校で習うべきスキル?